
#9です。
気付いているようで気付いていない。
どんなにその状況を想像しても、それは想像でしかないと思い知らされる。
自分の身に降りかかったとき初めて真剣に考えることになる話。
あなたは選択できますか?その選択は本当に正しいですか?それに答えはありますか?

■アバン
珍しくアバン有です。
食事をする女。
口の中に違和感を感じた女は鏡で口の中を見る。すると上顎に『歯』らしきものが生えていた。
■Aパート
『父母の骸に根を張りし苗よ。青い青い葉を伸ばせ。重い重い実を付けよ。』
ギンコは農民に声をかける。食料が尽きたらしい(ぉ
しかし、酷い冷夏のため蓄えるだけで精一杯。別の男が言う。
「一山向こうの村へ行きなよ。あそこだきゃ今年は豊作だって。」
男たちの話によるとその村の米は普通じゃないらしい。止めておいたほうがいいとも言われるギンコ。
『天災のたびに豊作になる先祖の呪い』
その話に蟲師ギンコはきゅぴ〜ん!
一山向こうの村。
「ワカレサクだ…ワカレサクだ…」稲を見て囁きあう農民たち。
「また誰かがご先祖様に取られるぞ…今年は誰だ…ご先祖様は弱いものから取りなさる…」
囁きあう農民たちを見詰める少年。そこにギンコが訪れた。
「よけりゃ食うもん売ってくれんかと思って。」飄々と少年に語りかける。
「他所もんにやるもんははねーよ。」
少年によると、この村は毎年十分な収穫はないらしく、蓄えられるときに蓄えておかなければならないらしい。今年の豊作は、村人たちがご先祖様を祀っているから土になったご先祖様が守ってくださると言う。
「その代わりひとり連れてく…か…」
動揺を隠せない少年に話を聞かせてくれとギンコは頼む。

少年はギンコに村のことを話し始める。
この村の田畑が酷い天災のたび豊作になるのは遥か昔からのこと。そんな年の秋には必ず誰かの口の中に『瑞歯(ミズハ)』が生えてくる。歯は秋の終わりに抜け落ち、その人は死ぬ。その命は豊作をもたらした先祖への供物。
しかし、村人は感謝してきた。痩せた土地で生きてこれたのだから。そして、命を落とす者は弱いものからと言われていた。
遺体は土葬。歯は祭主様がお堂に祀る。
「祭主?」
この村の祭りの一切を取り仕切る人物。少年はその後継者だった。
抜けた歯は少し経つと祭主にしか見えなくなる。少年が後継者に選ばれたのは、ときどき人に見えないものが見えるから。
話を聞いたギンコは祭主に面会を求める。
祭主の家には膨大な書物があった。
「農学書に日誌…」ペラペラの捲るギンコ。
自己紹介知るギンコは祭主に『ナラズの実』を探していると告げる。
「さて…?」
誤魔化した感のある祭主は、少年サネに話を聞かれたくないのであろう畑仕事に行くように言い、体良く人払いをする。
祭主は蟲師ギンコと話をする。
どうやら先代の祭主のときにも蟲師が訪れたらしい。
その蟲師も『ナラズの実』を探しに来たが、祭主はそんな実はないと一蹴する。
祭主は土地の実りのを、先祖のへの信仰、土地の研究の成果だと方便を言い放つ。
ギンコが『瑞歯』について問うと祭主は表情を一瞬変えるが、成人後歯が生えることもあると誤魔化す。

ギンコは最後に『ナラズの実』について問う。
祭主は先代から聞いたと答える。ある蟲師が『コウミャク』を封じ込めたモノ。
蟲の見える性質の祭主はなんとなくでも『コウミャク』がどういうものか理解している様子。
蟲は微弱なモノになるほど光を帯びる。蟲の根源たる『コウキ』に近いから。『コウミャク』は『コウキ』の流れる筋。それらは言わば生命そのもの。操作ができるれば不死や蘇生など如何様にも使い道がある。それは蟲師最大の禁じ手。
『ナラズの実』はその例外のひとつ。土に埋めれば周囲に一年限りの豊穣をもたらし、代償として恵みを受けた生命体のひとつを奪う。いわば等価交換か…
ギンコが聞きたかったのは、祭主が手に入れたらどうするかということ。
『ひとつの命で多くの命を救える実』手の内にあったのなら…
祭主は迷わず『使う』と明言する。実が実在するなら犠牲を見過ごすほうが罪だと。
ギンコは追求する。使うごとに影響力を増し、やがては全ての均衡を崩してしまうかもしれない。
祭主はギンコに問う。「じゃあ、お前は使わんというのか?使わずにいられるのか?」
「わからんねぇ…」ギンコらしい回答です。
土地を切り開いてきた誇りと異形のモノに頼るという土地に対する侮辱。
激昂するも揺れる祭主。そうこれは“もしも”の話。

「そう…そんな実はひとりの人の手には余る。実りすぎた稲穂が重い頭を垂れるよに、必ず手から零れ落ち、土へと横たわるのだ。その後の人の苦しみを知るべくもなく…」
祭主にも本当は分かっているのだ。それは間違っていると。
しかし『いけないと分かっていてもつい手が出てしまう…それが禁断の果実の甘みというものかぁ!』と、某ファントムが語ったことが全て!(ぉ
夕方。
話を終えたギンコは畑仕事を終えたサネに会う。
「それであなたは皆を助けてくれるの?」
「あぁ…だがそれには村全体の承諾がいる。ワカレサクの仕掛けを全て話した上でな…」
祭主はギンコを止めようとして興奮したせいか胸を押さえ倒れてしまう。
「祭主様!!」
■Bパート
とりあえず祭主を家に運び床に就かせる。どうやら祭主は最近体調が悪く薬を服用していた。
ギンコは服用していたという薬を確かめる。
夜。
目を覚ました祭主にギンコは、無責任ではないのかと問う。
どうやら祭主が飲んでいたのは薬ではなくて毒だったらしい。
祭主はギンコが、実を手に入れるのではなく田を焼き実を滅するつもりだと知り語りだす。
「頼む。俺はあの実の最後の犠牲者は、俺にすると決めていたんだ。」

あの実は先々代の祭主が何処からか持ち帰ったもの。それ以後、天災の度に幾度となく実は用いられ、混乱を避けるため実は祭主のみが知るところとなった。
祭主の代となり村の存亡がかかる天災が起こったのが20年前のこと。祭主は、実を使うかどうか悩みに悩んだ末、使うことを決断する。
土地に穴を掘り実を埋める。
「これでいい…これでいいんだ…」
村全体のことばかり考え誰が亡くなるか…個人のことを考えていなかった。
妻が身体の変調を隠していたことに、祭主は気付いていなかったのだ。秋に『瑞歯』を生やしたのは妻だった…
床に臥せってしまった妻に「お米…食べて…アンタまで死んでしまう…」言われるが祭主は食べることができない。妻の命と引き換えにした米を。妻の願いのこもった米を…
ある日妻は病を推して食事を作る。
「辛くとも食べて…私の命をアンタが食べてくれるなら、なんだか死ぬのも怖くない。」
男は涕泣しながらも食べる。妻の優しさに満ちた命の米を。

『瑞歯』は『ナラズの実』
妻から抜け落ちた実を祭主は捨てに行こうと決心する。が…また来るであろう天災のことを思ってしまう。その時、祭主は気付いたのだ。もう一度だけなら、誰の犠牲も見ずに使えることに。
そしてこの年、祭主は使うことを決断する。最後の犠牲は自分として…
祭主は自分の死後、サネに処分してもらう算段だった。『ナラズの実』は蟲師の言うところの『コウミャクスジ』に埋めることで取り込まれ姿をなくす。実の正体は語らずに逝くつもりだったのだ。
「いいのかそれで…?」
話を聞いたギンコは祭主に問う。誰よりもこの土地の行末を見たいのはアンタではないのかと。
「見えるさ。このまま諦めなければ、この土地は少しずつ豊かになっていく。いつか必ず何不自由なく暮らせる日が来るはずだ。」
祭主は村人を信じ、確信を持っていた。いや、ただ信じたかったのかもしれない。知らなかったとはいえ妻が命を懸けて守ったこの村の人々を。
「あんたの望むとおりにすればいい。」
ギンコは話を聞き納得した上でもうひとつ祭主に問いかける。それは…
ある秋の日。
縁側で村の田を眺める祭主。
喀血した祭主の口の中に『瑞歯』が生えてきた。指で確認し祭主は力なく笑う。
身体が弱っていたサネの母も米を食べ少しずつ良くなってきていた。
「そうか。良かったな。」
優しく語り掛ける祭主は、サネに後継者として後顧の憂いを託す。

祭りの夜。
サネは未熟ながらも祭りを取り仕切る。
「おいサネー。なんか祝詞去年と違うぞ(笑)」とからかわれながら。
村人たちは何も知らない。今年は祭主に『瑞歯』生えたことも今までの経緯も。何も知らず無邪気に喜んでいる。
村の中で唯一祭主のことを知っているサネは、人知れず泣くのだった。
祭主の元へ祭りの報告をするサネ。
祭主は、口の中の『ナラズの実』を抜き取り、サネへ託して静かに息を引き取る。
「だいじょうぶ…言われたとおりにするよ…祭主さま…」
号泣するサネ。祭主は安らかに死ねたのだろうか…
「なんでこんなの…こんなの嫌だよぉ…」
ただ静かに見守っていたギンコはサネから無理やり『ナラズの実』を奪い取る。
「ひぇ…?」
「これから俺のすることは一切他言しないでくれよ。」
鬼気迫る表情のギンコ。いったい何を…
あの時、最後にギンコが祭主にした問い。
『コウミャク』は生命そのものだが、そのまま生物に流し込んでも蘇生はできない。しかし可能にしたのが『ナラズの実』ということになる。
『ナラズの実』を食えば動物も蘇生できるはず。
しかし、これは賭けである。
さらに植物との相違故に『コウミャク』は体内に宿り続ける。つまりそれは不死…生物を超えたモノ。すなわち蟲となる。
「アンタはそれを受け入れられるか?」
蟲師としての禁じ手だが、祭主の真意を聞いたギンコは、傷を暴きたて実の存在を確かめるようなことをした詫びとして手を汚す決意をする。
祭主の回答は決まっていた。見届けることができるなら土地の行末を見届けたかったのだ。
『その里において、その土地の豊作は後々まで語り草になったという。ともに…奇妙な伝説も生まれた。長く続いたワカレサクの途絶えたその年…できた米は死んだ男を蘇らせた。その男は不老不死となり諸国を歩き、時折戻ってはその地を潤す新たな農法を伝えてゆくのだという。』
サブタイトルのとおり『重い実』の話でした。まさに命の実です。
大を生かすために小を殺す。
少ない犠牲で多くのモノを救う。
人間が当然のようにしていることですね。
全てを救えるならそれに越したことはない。しかしそれができないときは…
犠牲になるモノが自分にとって最愛のモノだったら…
理性だけならそれは間違いだと判断できる。
係わりのない何処かの誰かならまさに対岸の火事。
自分自身ならば諦めもつくかもしれない。状況に酔うこともできる。
しかし、その時ほとんどの人間は最愛のものを守るために抗うでしょうね。
祭主も犠牲になる者が村人の誰かだったら、役目を理由として後悔はしなかったでしょう。
選ばれたのが妻だったから間違いに気がついた。
不老不死になった祭主は、妻の命を犠牲にして歩み続ける村を未来永劫見守っていくのでしょうね。
神の子を見守るあの廉子のように。
『ナラズの実』
ナラズってどういう字を書くのでしょう?
成らず→一人前になっていないこと。成就していないこと。
ならず(者)→手に負えない(者)。生活がままならない(者)
生る→果実が生ずる。みのる。→果実が生じない。みのらない。
ここらの意味合いが当てはまりそうな気がしますが…どうでしょう?
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